No.44 解説
道元禅師は折にふれ、たくさんの和歌を詠まれています。それらは﹃傘松道詠﹄という歌集にまとめられて親しまれてきました。 その歌には、人間の心情や自然がたくみに表現され、文学作品としても高い評価を受けてきました。 また一方では、仏の教えを端的に表し、真髄をズバリと指摘する力強さ、厳しさを句外に偲ばせております。 標題の句は、道元禅師がお釈迦様、祖師様方のお心を慕い仏道修行に励む中で、目に見え、耳に聞こえる自然の一つひとつの中に、仏のいのちをお感じになられた句です。自然を見つめ、原点を見直すためにも、現代にこそ味わい深い意味を持つ一句と言えましょう。