No.43 解説
表題の文は、道元禅師が比較的初心者の弟子達のために書かれた、﹃学道用心集﹄の中の一節です。 この書は、修行にあたっての基本的な心得を十条に簡潔にまとめたものです。その最初の条は﹁菩提心を発すべき事﹂、次に﹁正法を見聞して必ず修習すべき事﹂…というように、仏道実践のための最も基礎的な心構えが続きます。 さて、この一節は六条目の﹁参禅に知るべき事﹂の中に記されます。参禅学道は一生の大事であり、ゆるがせにしてはならないと述べ、先人の厳しい修行を紹介した上で、それに対して、今世︵当時︶の仏道を説くものの中には、行い易いものを行いなさい、と誤った教えを説いていることを痛烈に批判しているのです。そしてこの一節に続いて、﹁もし易き行を求むれば、定んで実地に達せず、必ず宝所に到らざらんものか﹂と、述べています。 これは、一般の生活や仕事に当てはまるのではないでしょうか。