No.35 解説
道元禅師は、仏法を説くために﹃正法眼蔵﹄等の著述を残されたのみならず、和歌の形で様々な教えも示しています。それらは、﹁傘松道詠﹂という名で広く知られています。 それらの歌の中には、自然と人間が一体となった心情がたくみに表現されたものが少なくありません。そこには、禅師の独特な世界観が現れているのです。 今回取り上げた歌は、中国唐代の禅僧、鏡清とその弟子の問答を踏まえています。鏡清は僧に質問しました、﹁外の音は何だ?﹂。僧は答えました、﹁雨垂れの音です﹂。鏡清は僧にいいました、﹁お前は、自分を見失ってものにとらわれているぞ﹂。 鏡清は、何を言いたかったのでしょうか。その答が、禅師の歌の中にあるのではないでしょうか。