No.39 解説

 表題の句は、道元禅師の書かれた、『正法眼蔵(ショウボウゲンゾウ)』「栢樹子(ハクジュシ)」の巻の一節であります。この巻は、本文にあります趙州(ジョウシュウ)禅師の問答の一つを取り上げて感想を述べたものです。ある僧が禅師に質問しました。「如何(イカ)なるか祖師西来意(ソシセイライノイ)=なぜ達磨大師は、はるばる西から仏法を伝えに来たのですか?」と。禅師曰く「庭前(テイゼン)の栢樹子(ハクジュシ)」=庭のコノテガシワの木である、と。これは禅の真髄を説く有名な問答ですが、大切なことは、理屈をはなれて目の前の全体の姿を捉える意であります。道元禅師は、言葉の一句にとらわれるよりは、趙州禅師の日常生活への厳しい姿勢全体から学びとるべきことを教えてくれています。
 平成14年は、道元禅師の750回大遠忌(ダイオンキ)の年に当たります。この度の大遠忌にあたり、その御遺徳を偲び、さらに禅師の教えを高揚すべく、テーマを「慕古(モコ)」と掲げております。「慕古」という言葉は、『正法眼蔵』の他の巻にも延べ7箇所にわたって使われており、道元禅師の精神を伝えるに最も相応しい言葉といえます。


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