No.23

 これは道元禅師の書かれた、『正法眼蔵』「菩提薩睡四摂法」のなかの一節です。「四摂法」とは、菩薩が一般の人々と摂する四種の方法のことです。それは、布施・愛語・利行・同事の四つです。

 さて、この「利行」の元来の意は、自分のことはさておき、他人の利益を優先して行う行為のことです。何も報いを求めたり、代償を期待する行為ではありません。

 しかし、道元禅師は「利行は一法なり」と示しています。一法とはここでは、全てを網羅しているという意です。つまり、利行は自分から他人への単なる一方通行でなく、他人から自分へ、他人からさらなる第三者へ、無限の広がりを持ち、自分自身に利益をもたらす素晴らしい行為である、と述べているのです。


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