公共的施設における受動喫煙防止条例

「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例(仮称)」骨子案 (案) (平成20年9月)が今月9日、神奈川県より公表されました。

この条例の目的は

受動喫煙による健康影響を防止し県民の健康を守るためには、すべての公共的施設において、早期に受動喫煙防止対策が徹底されることが望ましいと考えます。
また、喫煙者・非喫煙者の双方の自由や事業者の経済的自由等にも配慮することが求められます。
そこで、県では、受動喫煙防止対策を実効のあるものとし、また規制についてきめ細かい配慮をするため、施設の性質、利用の実態等に応じた規制とするとともに、あわせて、本条例では規制の対象とはしていない職場や家庭も含めた受動喫煙の防止を促進するための施策を定めることとしました。
なお、未成年者は受動喫煙による健康影響についての正しい知識や、自ら受動喫煙を避ける判断能力・行動能力が必ずしも十分でないため、より受動喫煙による健康影響を受けやすいと考えられますので、可能な限り、その保護が図られるようにしました。
(神奈川県のホームページより)

ということです。

神奈川県は、当初「不特定多数の人が利用する施設での原則禁煙」を条例の骨子とすることを目指していましたが、そこまでは踏み込めず、居酒屋やパチンコ店などでは分煙という骨子となりました。
さらに、キャバレーやパチンコ店などは、3年間は猶予期間が与えられ、条例の対象にはなっていません。

理由は業界からの反発が大きかったことと、元々喫煙率が高い場所にこの条例を適用することに無理があると判断したことによるものだそうですが、それで良いのでしょうか。

 

条例を簡潔にまとめると

■第1種施設は原則禁煙
学校、体育館、病院、劇場、百貨店、官公庁、公共交通機関、金融機関、社会福祉施設など

■第2種施設は分煙・喫煙を選択できる
飲食店、宿泊施設、第1種施設以外のサービス業施設

■第2種の次の施設は分煙化への移行に3年の猶予
飲食店(キャバレーやバーなど)
遊技場・娯楽施設(パチンコ、マージャンなど)

■該当しない場所
住居や共同住宅、社会福祉施設の個室。宿泊施設の客室。公共的空間を持たない事務所。

■罰則
個人喫煙には過料。
施設管理者が適切な処理をしない場合には指導・勧告・命令・過料措置。
悪質な施設の情報を一般公開。

 

ということです。
原則禁煙とされる「第1種施設」には、学校、体育館、病院、劇場、百貨店、官公庁、公共交通機関、金融機関、社会福祉施設などが列挙されております。

では、お寺はどのような位置づけになっているかというと

第1種施設
(6) 集会場 公民館、児童館、結婚式場、葬祭場、火葬場、納骨堂、境内建物、その他これらに類する施設


として、利用者に選択の余地が無い(もしくはほとんど無い)、代替性が低い施設、健康維持や健康増進を目的に利用される施設、多数の者が集合して利用する施設及び他法令(条例を含む。)等により喫煙が規制されている「第1種施設」として分類されています。

したがって、お寺の本堂、客間、境内建物(庫裏を除く)については、原則禁煙が義務付けられることになります。

さて、ここで、この条例の根拠となる受動喫煙の害について見てみましょう。
受動喫煙とは、喫煙者の周囲の人が、自分の意思とは無関係に「環境たばこ煙」に曝露され、それを吸入することと定義されます。
「環境たばこ煙」とは、「副流煙」(喫煙者が直接吸う主流煙に対し、たばこの先から立ち上る煙)と、「呼出煙」(喫煙者の吐き出す煙)が混じり合った煙でありますが、この「副流煙」は、喫煙者が直接吸引する「主流煙」よりも非常に多くの有害物質が含まれていることが問題となっているのです。

たばこの主流煙と副流煙の有害物質

  有害物質
主流煙(mg/本)
副流煙(mg/本)
気相 一酸化炭素
31.4
148.0
二酸化炭素
63.5
79.5
窒素酸化物
0.014
0.051
アンモニア
0.16
7.4
粒子相 ニコチン(フィルターなし)
0.92
1.69
ニコチン(フィルターあり)
0.46
1.27
ベンツピレン
3.5×10α(※)
13.5×10α(※)
フェノール系
0.228
0.603

(※)10 α=10 万分の1 (10 のマイナス5 乗) (US Dep.Health,Education and Welfare:The Health Consequences of Smoking(1975),1975 )

 

このように受動喫煙による健康影響は明確な根拠があります。
神奈川県の条例<案>は全国の自治体に先駆けて検討されている厳しい内容のものとなっておりますが、むしろ今までこのような規則が整備されていなかったことの方が問題であると感じます。

「お寺でも禁煙」ということが常識であるという認識をもつことが必要になります。

投稿者: kameno 日時: 2008年9月11日 08:13

コメント: 公共的施設における受動喫煙防止条例

ニュースで拝見しましたが 今までにない具体的な内容に
行政のやる気が感じられます。

お寺で禁煙 は火事を注意しての傾向が強く感じられますが 上記のデーターは説得力があります。

 地元の青年会では たばこを吸わない方が1割と
逆の意味で肩身が狭いのですが 私の寺は禁煙にしました。
玄関先のみ喫煙可能にしています。

投稿者 ゆ?じ@FreeTibet | 2008年9月11日 14:23

ゆ?じ@FreeTibetさん
僧侶の喫煙率は意外と高いですね。それにしても9割ですか。
たばこ税の引上げや喫煙場所の制限など、喫煙者にとっては辛い時代になりましたね。
まあ、受動喫煙の危険性を考えれば仕方の無いことなのだと思います。
こちらの教区でも禁煙される方が多くなりました。

投稿者 kameno | 2008年9月11日 17:35

お坊さんは喫煙率が高い…
確かにそうかも!

知人の住職もヘビースモーカーです。
檀家のみなさんからタバコをいただけるので、と
申しておりました。

わたしの仕事先の芸能関係も喫煙率が異常に高く、
8割くらいです。会議に出席を頼まれても、
なるべくスカイプ参加にしてもらっています。
不思議なのは、喫煙者の中でふだん気の回る人であっても、
ことタバコとなると、非喫煙者の気持ちをまったく
と言っていいほどわかってくれないことです。

神奈川県にはがんばってほしいです。
近所のパチスロ屋さんも最近禁煙になりました。

投稿者 宝船 | 2008年9月12日 21:08

宝船さん
喫煙率の高い会議は、非喫煙者にとってはつらいですね。
喫煙・非喫煙比率が逆転するようになると、状況は一気に変わってくれると思います。
まずは条例の効果に注目したいところです。

パチスロ屋さんの決断も、勇断ですね!

投稿者 kameno | 2008年9月13日 11:29

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