中国で広がる宗教心 ‐追記

昨日まで中国・浙江省へ教区寺院三か寺合同で檀参旅行へ出ておりました。
(その旅行記のまとめはこちらです

さて先日、中国で広がる宗教心という記事を書きましたが、それを実感する旅でもありました。


禅宗の源流を訪ねる旅として、浙江省の寺院を拝登させていただきましたが、とにかく参拝者の多いことに驚かされます。
写真は霊隠寺の境内。
平日の昼間だというのに、とにかく人人人の波です。

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霊隠寺では、境内を拝観するためには、75元 (今年の大晦日=2月7日には 200元!) もの拝観料をお布施しないと入れません。
1元は約16円ですから、75元だと1000円以上。
中国の物価からすれば相当高いといえます。
それなのに、これだけの参拝客が集まるのです。


杭州の習俗:初詣は霊隠寺 元日の掃除は禁物

浙江省杭州市には、「除夜には霊隠寺に出かけ初詣する」「旧暦の元日には地面を掃いてはならない」など、春節(旧正月)にまつわるさまざまなしきたりがある。北京の日刊紙「京華時報」が伝えた。
▽大晦日
語呂合わせや形状などの縁起がよいとされる食べ物を用意する。例えば、肉や魚のすり身団子は、丸いことが家族団欒を表す言葉「団円」に通じるので、縁起がよいとされる。小麦の生地を薄く延ばして焼いた白い皮に肉の細切りを包んだ「春餅」は、「金の糸を銀で包んだ」形状に似ている。大豆のモヤシは「如意菜」という別名があるが、「如意」は「意のままになる」の意味。落花生には「長生果」の別名がある。
▽除夜
大晦日の夜、杭州人は決まって霊隠寺に出かける。門の前で列を作って待った後、新年の訪れとともに参拝し、新年最初の線香を上げ、1年が順調に過ごせるよう加護を願う。また、人々は先を争って境内の鐘を鳴らしに行く。
▽元日
旧暦の元日の朝は、お湯で煮た団子、または甘い餅を食べる。これは、一家が円満で幸せな生活を送ることができるように、という願いが込められている。子たちは起きるとすぐに年長者に年賀のあいさつをし、お年玉をもらう。元日には、入ってくる金運を追い出したりしないよう、地面を箒で掃いてはならないという。
「人民網日本語版」2006年1月30日



それにしても、老若男女を問わず、熱心に、自然な姿で祈りを捧げる様子が印象的です。

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※写真は天童寺にて

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参拝の作法は、基本的には寺院参道で売っているお参りのセット(蝋燭、線香、御札など)を買い、まず大香炉で線香の束に火をつけます。
そして、正面に向かい両手で線香を頭の上に捧げ、3回礼して、そして右方向に同じく3回、後に3回、左に3回・・・というように右回りに一回転します。
そして線香を香炉にくべて、本殿内部にお供えをして、礼拝具で五体投地を行います。
とにかく、一人一人丁寧に礼拝を行っています。


※写真は浄慈寺
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霊隠寺では、僧侶たちによる法会が行われていましたが、参列者も一体となって祈りを捧げていきます。
これらの様子を目の当たりにすると、中国が無宗教であるというのは全くの見当違いであるということが判ります。

※写真は霊隠寺
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確かに中国においては、魏武、周武、会昌、後周の法難により仏教弾圧が繰返されてきました。
そして、1960年代後半から1970年代前半まで続いた文化大革命により、旧思想・旧文化の破棄をスローガンとし、宗教も一切禁止され、紅衛兵らによって教会や寺院も・宗教的な文化財が破壊されました。

しかしながら、七難を免れるという観音信仰は、中国人の心に浸透流行し、文化大革命の間も細々と生活に根付いていたのでしょう。
中国の経済発展が加速するにつれて、観音信仰はもとより、伝統宗教への回帰は顕著となりました。

中国における仏教は、大乗仏教、チベット仏教、上座仏教の大きな三つの系統がありますが、現在、仏教の寺院数は1万3000か寺以上、僧侶は20万人とも言われています。

僧侶となるためには基本的な条件がいくつかあります(後日詳述する予定)が、それらの条件を満たした上で、各地方に点在する仏教学院を卒業したものが寺院に上山し、僧侶として修行しています。
最盛期の10分の1ではありますが、例えば天童寺には 100余人、霊隠寺には 300人ほどの僧侶が在籍しているそうです。

中国の宗教は、現世利益を重視しているという点が特徴といえます。
金運、良縁、就職、健康・・・とにかく、願いごとに向かう人々の姿は真剣そのものです。


一般市民の娯楽の中にも、仏教・観音信仰の場面は、ごく普通に登場します。
写真は杭州市・東坡劇場で観劇した『西湖之夜』より、第四景「東方佛光」
(撮影許可済)
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そして、ホテルのエレベーターの前にも。

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本屋では、財産を為す風水として、仏像や観音像をどこに置いたらいいかという本もたくさん見られ、ここにも現世利益を求める熱心さを垣間見る事ができます。

信仰に向かい合う姿は、日本人のお伊勢参りのような感覚に近いように思えます。
そして、宗教に向かい合う姿勢は、むしろ日本人以上なのかも知れません。

投稿者: kameno 日時: 2007年3月10日 01:03

コメント: 中国で広がる宗教心 ‐追記

こんにちは。ご免下さい。

いや!羨ましいです!天童寺拝塔ですか?!!
三ヶ寺合同団参ですか。さぞかし有意義な中国旅行だったと思います。今後の報告も楽しみです。


礼拝作法も独特で面白いですね。
線香が日本のそれに比べかなり太いのが異文化衝撃ですよね。(日本の線香は細すぎ…)

!!
>杭州市・東坡劇場で毎夜行われている『西湖之夜』より、第四景「東方佛光」

これはもしやあの難聴者の方々がやっている劇団のものですか??これは絶対に見ておきたい観音菩薩です!!

投稿者 pumpkin | 2007年3月10日 09:15

pumpkinさん、行ってまいりました。
とても心に残る旅行でした。
道元禅師の足跡を少しでも感じることができましたし、なによりも中国のパワーに圧倒された旅行でした。
良い意味で刺激を受けました。
参拝の作法は、火のついた太い線香の束を激しく振るので、とてもダイナミックです。

千手観音のパフォーマンスは、日本で放送された中国障害者芸術団のものと内容が同じでしたので、少なくとも演出者は一緒でしょう。出演者も同じかどうかは、確認してみます。

投稿者 kameno | 2007年3月10日 18:06

!!!!

やはりそうでしたか!!
というか、あの劇団の千手観音演劇は予約がいっぱいで中々見られないという話しを聞きましたが…(汗)

羨ましい…。です

投稿者 pumpkin | 2007年3月11日 10:58

pumpkinさん
中国障害者芸術団は、今度北京オリンピックの開会式にも登場するらしですから益々忙しいですね!

投稿者 kameno | 2007年3月11日 14:20

中国の寺院の写真を拝見しました。
私も配当したことのある寺院で、懐かしく思い出しました。
旅行記も、興味深く読みました。

中国人の熱心な参拝には、意外な思いもし、驚きました。
中国に宗教が広がっているのを、実感しますね。

千手観音のパフォーマンスをテレビで見ましたが、生で見ると迫力が違うのでしょうね。

投稿者 ぜん | 2007年3月12日 22:35

ぜんさん
日本においても、中華街の関帝廟や大船観音のように中国系の方々が多数参拝される寺社では、このような光景をみることができます。
やはり、そのパワーには圧倒されます。
お線香も、そのお供えの仕方も実にダイナミックです。
経済成長も凄まじく、数年後にはどうなっている事やらまったく予想ができません。

千手観音、良かったですよ。
近いうちにログに纏める予定です。

投稿者 kameno | 2007年3月13日 09:43

こんばんわ。最近よくお邪魔してます。
改めてkameno様の中国レポートを拝見していますと
やはり中国は一時こそ文化大革命の弾圧こそあれたくましく
信仰・・というか「祈り」の気持ちを大切に、仏教やその他道教?や儒教の智慧を生かしつつ大切にあたためていた、という事実を知りました。それは生きるんだ、というパワーなのでしょうか。
道元禅師は禅において「生きる」自分の命にすらも執着するべきではない、と説かれていたように私には聞こえていたのですが・・中国の方たちとはこの辺りの解釈が違うのでしょうか。
日本における仏教の生の捕らえ方としては人が人らしく、悪行に染まる事無く混沌に呆ける事もなくただ清々とあるのがよく、みんなの幸せのためにいざというとき身を呈して救う・・
といった事があるような気がします。
この辺り、いまの中国の人々の生き方はどんなふうに説かれているか興味津々です。
・・そうはいっても口で言うはやすし、頭で分かっていても中々実行が難しいのは、どのお国も同じなのでしょうね。
私も自分で言っておきながらあたまが痛いです。

投稿者 ゆが | 2007年3月14日 00:08

ゆがさん
とにかく中国人のパワーは凄いです。
ハングリー精神というか、志というか。
きっと、かつての日本人も同じような志を持っていたのではないでしょうか。
豊かになりすぎて見失ってしまったものも多いのかも知れませんね。

投稿者 kameno | 2007年3月14日 22:18

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