海水面上昇により失われる領土

地球温暖化 南太平洋のツバル 海外移住を考える住民

海面上昇による浸水や海岸浸食が年を追って深刻化する南太平洋のツバル。首都フナフティでは、住民の多くが海外移住を考え始めている。特に若い世代は、地球温暖化による「国の消滅」を、起こりうる現実として受け止めている。
 18日夕、ツバル唯一の国際空港の滑走路脇。足元のいたるところから、かすかな音が聞こえてくる。舗装された路面のわずかなすき間からわき出す水は透明で、間断なくはじける細かい泡が見える。なめると確かに塩辛い。海水はたちまち四方に広がった。
 約1万人が住む平均海抜約2メートルの国土は、サンゴ礁の上に砂が堆積(たいせき)してできた。海水は、海岸を越えてくるだけでなく、地盤にある無数の穴を通って地上にあふれる。
 「遅くとも10年後までに家族とニュージーランドに移住するつもりだ」。トマルさん(32)は国営電話会社に勤務するエンジニア。05年には衛星通信技術の研修で日本にも行った。
 同僚も多くが移住を考えている。この時期の浸水被害はもちろん、海岸線が削られてヤシの木が根元から波にさらわれたり、小さな島が消滅したりする現実を、誰もが目の当たりにしているからだ。「他の国の二酸化炭素が原因で島がなくなる。怒りを感じるが、だからといってどうしようもないだろう」。トマルさんはため息をついた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070219-00000005-maip-int



地球温暖化の進行により、南極や、陸上にある氷河などの氷が溶け出し、海に大量の水となって流入していっています。
その結果、海水面の上昇が深刻な問題を引き起こしています。
そのうちの一つが、冒頭の記事のように、ツバルのような島国や、オランダなどの海抜以下の地域を抱えた国々に与える影響です。
既にツバルでは集団移住が計画されていますが、国自体が消滅してしまうという異常事態が現実問題として起こっているわけです。
もはや、このような現状になす術も無く立ち竦むのみという状況です。

Tuvalu island.com
ツバル諸島を襲う衝撃的な写真の数々は、こちら↓で見ることができます。
http://www.tuvaluislands.com/photos/2006_tides/2006tides.html


そして、この海面上昇による影響は、もちろん日本にも及んでいます。

海面の干満差の激しい汽水域が海面上昇により変化し、沿岸養殖などの漁業に深刻な影響を与えはじめています。
また、沿岸都市部の地下水位上昇によって、地下構造物に設計基準以上の浮力が上昇し、結果的に構造物が壊されてしまう恐れや、地下水に海水が混入してしまうという問題も生じています。

さらに、日本最南端の島、沖ノ鳥島に与える影響も深刻です。
沖ノ鳥島は、北緯 20°25′31″.9768、東経 136°4′52″.1430 に位置する 東京都小笠原村の小島です。(岩と主張する国もありますが)
満潮時には、海水面から僅か数十センチしか頭を覗かせない島でもあります。


海洋法に関する国際連合条約 (国連海洋法条約)

第八部 島の制度
第百二十一条 島の制度

1 島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。
2 3に定める場合を除くほか、島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、他の領土に適用されるこの条約の規定に従って決定される。
3 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。




このように、沖ノ鳥島が、海水面上昇によって高潮時にすべて海面下に水没してしまうようになると、当然海洋法上の島とはとても主張できなくなり、日本の国土全面積よりも広い半径200海里(370.4km)、約40万km?の排他的経済水域(EEZ)を失ってしまうこととなります。

1988年から段階的に行われてきた、工事費用合計約300億円にも及ぶ消波ブロックとコンクリート護岸工事が水の泡と化すことは言うまでもありません。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による2001年報告では、100年後には平均気温が1.4?5.8℃上昇し、2100年には1990年に比べて9?88cm海水面が上昇すると予測されています。

私たちにできる対策は何があるでしょうか。
もはや時間は残されていません。

投稿者: kameno 日時: 2007年2月20日 18:56

コメント: 海水面上昇により失われる領土

> 地球温暖化の進行により、南極や、陸上にある氷河などの氷が溶け出し、海に大量の水となって流入していっています。
>その結果、海水面の上昇が深刻な問題を引き起こしています。

海水面の上昇の原因は地球温暖化に間違いはありません。しかし、
・北極海の氷(氷山)が解けても海水面は上昇しません。(理由は後述)
・北極圏の陸上の氷が解けて海に流れ出したら影響はありますが、地球にある陸上の水は実際は微量なので極めて影響は軽微なのです。
・南極の温度上昇で(大陸上の分厚い)氷が解ければ影響はあるといえますが、極地の冬の気温はマイナス50度以下にもなり、若干の温度上昇でも解けようがありません。氷は降雪に由来しており、周辺の温度上昇は海からの水蒸気の増加を招くために、降雪量の増加が見込まれています。その結果、氷の増加となって、海水の減少(南極大陸への陸揚げ)への影響もあり得るそうです。

補足ですが、水はセ氏4度が最も比重が高く(体積が小さい)それより下がっても上がっても膨張します。特に氷になるときには1割近くも膨張します。氷山の一角といいますが、海面から氷山が出ていると、海底にはその10倍程度の体積の氷が沈んでいます。この氷塊全部が解けて同じ温度の海水になったとしたら、元の氷山の海底部分と同じ体積になるだけで、海水面への影響がないわけです。
ちなみに氷山のあるような海水の温度は、イオンが溶けているためにモル凝固点降下によってマイナス数度です。(塩と氷でアイスキャンデーが作れる理屈)そのため、氷山が解けてさらに海水の温度が4度に近づくまでは海水は収縮すると言えるのです。
一方、4度を超えると今度は膨張を始めます。セ氏18度の水は1度上昇で約0.1%膨張します。仮に、海面から深さ1000mまで平均1度の温度上昇があると、海水面は1m上昇することになります。
やっと結論ですが、ミクロネシアあたりで海水面上昇が顕著になっている最大の理由は海水温の上昇による海水の膨張なのです。陸上の氷の解け出しはないとは断言できませんが、あってもほとんど無視できるほどと考えてよいでしょう。日本海中部の海水面の温度は1.6度上昇したという報告もあります。

ともあれ、地球温暖化は、生態系としての地球に甚大な影響があることは間違いありません。
しかし、氷河期と間氷期(現在は第四間氷期)とのブレに比べたら小さなものであり、天体としての地球には微塵の影響のないものですが。

投稿者 M.Ishizaki | 2007年6月 6日 21:52

M.Ishizaki さんコメントありがとうございます。
当然、北極海の氷が溶けても海水面は上昇しません。
そのことはわかっておりますし、そのようなことは記述しておりません。
仰るとおり、海水の膨張によることも海水面上昇の一因である事は間違いないでしょう。
水の膨張率を0.0002として、海の平均深度を4000mとします。
仮に海水全体が0.5℃上昇したとしたら、海水面は約40?上昇するでしょう。
ですから、海水面上昇の原因は
・地球温暖化による南極や、陸上にある氷河などの氷の溶解
・地球温暖化による海水温度上昇による海水の膨張
・森林破壊による陸上保水力の低下
その他、様々な要因の複合の結果であると考えられます。

ここのトピックスの主旨は地球温暖化が海水面の上昇をもたらすこと、海水面上昇により国土が失われるということを紹介し、その地球温暖化に対して何が出来るのかを考えるということですのでご理解いただけると幸甚に存じます。

投稿者 kameno | 2007年6月 6日 22:13

はじめまして。
学校の授業でツバル島について調べているのですが、ツバル島の画像を使わせては頂けないでしょうか?
どうか、よろしくお願いいたします。

投稿者 コヤマ | 2007年11月19日 11:39

コヤマさま
はじめまして。
ツバルの写真ですが、権利はTuvalu Onlineに帰属しております。
ただ、教育に使うことと、写真に(c)by Tuvalu Online と明示しておくことにより、特に問題はないだろうと思います。
もしご心配でしたら、一文、使用に関してメールでお知らせしておくのもよろしいかと存じます。

投稿者 kameno | 2007年11月19日 22:58

はじめまして。初めて投稿させていただきます。
>ここのトピックスの主旨は地球温暖化が海水面の上昇をもたらすこと、海水面上昇により国土が失われるということを紹介し、その地球温暖化に対して何が出来るのかを考えるということですのでご理解いただけると幸甚に存じます。

海水面の上昇は何年でどのくらい上昇するのでしょうか?そのあたりを明確にしていただければ、温暖化に対する意識も変わるのではないでしょうか。
ちなみにツバルは海水面上昇が原因で沈んでいるのではなくて、空港建設による地盤沈下が原因と聞いております。ハワイ大学とオーストラリア政府の発表が出ているかと思います。このあたりも説明していただけないでしょうか。
一般の方に誤解の無いよう、正確な情報を発信していただければと思います。宜しくお願いします。

投稿者 サイトウ | 2008年7月 5日 09:35

サイトウ様
コメントありがとうございます。

>海水面の上昇は何年でどのくらい上昇するのでしょうか?そのあたりを明確にしていただければ、温暖化に対する意識も変わるのではないでしょうか。


気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第27回総会(2007年11月、於 スペイン)において、IPCC第4次評価報告書統合報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認され統合報告書本編が受諾されました。
一部引用します。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候システムの温暖化には疑う余地がない。このことは、大気や海洋の世界平均温度の上昇、雪氷の広範囲にわたる融解、世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である.
最近12 年(1995?2006 年)のうちの11 年の世界の地上気温は、測器による記録が存在する中(1850 年以降)で最も温暖な12 年の中に入る。過去100 年間(1906?2005)の線形の昇温傾向は100 年当たり0.74[0.56?0.92]℃ であり、第3次評価報告書で示された0.6℃[0.4?0.8℃](1901-2000)の傾向と比べて大きい。温度上昇は地球全体にわたり生じており、とりわけ北半球のより高緯度地域でより大きい。陸域は海洋に比べより速く温暖化している。
海面水位の上昇は温暖化と一貫している(整合性がある)。世界平均海面水位は、熱膨張、氷河や氷帽の融解、極域の氷床の融解により、1961 年以降、年年平均1.8[1.3?2.3]mm の速度で上昇し、1993 年以降について言えば、年当たり3.1[2.4?3.8]mm の速度で上昇した。1993 年から2003 年にかけての海面水位上昇率の増加が十年規模の変動あるいは、より長期的な上昇傾向を反映しているのかは不明である。
第27回IPCC総会統合報告書(2007年11月17日)
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th/interim-j.pdf


また、ご指摘の空港建設の問題や、なぜ最近になって海水の浸水が大きな問題になったかについては、東京大学大学院教授(沿岸海洋学・環境変動論)茅根教授によると、太平洋戦争時の1943年に建設された飛行場のために、島の中央低地にあった沼地だった場所が分からなくなってしまった。さらに1980年代からの人口増で、100年前には100人程度しか住んでいなかったフナフティの人口はいまや4,000人。かつて人が住んでいなかった湿地帯にも人が住み出したため、浸水が問題になるようになった、と指摘しています。

出典:「“水没しつつある”ツバルの窮状」 Science portal に掲載
http://scienceportal.jp/news/review/0806/0806201.html

これまでこのブログでの本文中や、コメントの遣り取りで見ててきたように、一つの原因のみではなく、複合的な要因により、「目に見える形で」地球温暖化の象徴として捉えられています。
地球温暖化のために私たちがどのような対策を講じるべきなのかを考えていく必要があるということには何ら変わりがありませんが、「ツバル」が直面する地球温暖化による海水面の上昇というグローバルな課題への取り組みは、結局は、ツバルという地域の特殊性を考慮したものであることを前提することが必要でしょう。


なお、ツバルが具体的かつ緊急的にに日本に支援してほしいことは、沿岸域の保全だということです。
植林、人工砂州、海岸防護壁などの構築によって、激しい気象変化に弱い沿岸域の住居を守る資金の支援。
そして雨水の回収、貯蔵法や地下の淡水層を海水の浸入から守る方法の改善、下水処理の改善、家畜の糞尿(ふんにょう)を回収して肥料やメタン生産に結びつける処理法の改善など。
また、輸入燃料の高騰がツバル経済の大きな重荷になっていることから燃料の輸入依存度を下げるために再生可能なエネルギーの開発と省エネルギー技術を必要としている。全島に太陽光発電システムを展開し、風力やバイオ燃料といった再生可能なエネルギーを探求、導入するなどに関して日本の支援に期待しているとのことです。

出典: 太平洋島嶼国の環境と支援を考える国際シンポジウム(6月19日、環境省、外務省主催) マタイオ・テキネネ 氏(ツバル天然資源・環境省環境局長)の講演より
http://scienceportal.jp/highlight/0807.html#0807041


このように緊急性を要する支援活動と、長期的に見た地球温暖化対策を複合的に講じていくことが大切なことといえましょう。

投稿者 kameno | 2008年7月 5日 10:45

コメントを送る