蝋梅と正倉院の五弦琵琶

境内の茶室横に植えられている蝋梅(ロウバイ)が咲き始めました。
とても地味な花ですが、早春の寒い境内に漂う蝋梅の甘い芳香は人を幸福にしてくれます。

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昨日、近隣の寺院で中国琵琶奏者・シャオロンさんの演奏会があり、出演前の楽屋に御邪魔させていただき、いろいろとお話をさせていただきました。

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その時に話が出たのですが、蝋梅をまだ見たことがないとのこと、ということで、いま咲いている蝋梅の花を写真に撮ってみました。
蝋梅は、もともと中国が原産で、日本には17世紀頃に渡来しているものですから、中国にもきっとあるのでしょうね。

シャオロンさんは、昨年7月に貞昌院本堂で、9月にゆめ観音アジアフェスティバルで演奏をしていただいています。
(関連トピックスはこちら)
貞昌院 http://teishoin.net/blog/000189.html
ゆめ観音 http://teishoin.net/blog/000222.html

さて、シャオロンさんですが、最近は急に忙しくなり、日本中、世界中で演奏活動をされています。

現在は、中国琵琶だけではなく、正倉院の復元楽器を使用する室内アンサンブル「天平楽府」で、五弦琵琶にも挑戦されています。


【五弦琵琶】

五弦琵琶はインドに起こり、中央アジアから北魏に入り、日本に伝わったと考えられ、ペルシャを起源とする四弦琵琶とその発祥を異にしている。
正倉院存庫の琵琶は、現存するものとしては世界唯一のもである。
琵琶と比較して頭部が屈曲しないでまっすぐにのび、胴の幅が狭く、厚みがあるのが特徴で、表面の(ばち)があたる部分には亀甲が使われ、螺鈿で西域の人物が駱駝にのり、面白いことに四弦琵琶を奏でる図に、熱帯樹と五羽の飛鳥を配している。
背面の槽(そう)は紫壇で作られ螺鈿で上下二つの大宝相華文と二羽の含綬鳥と飛雲を配したまことに華麗な琵琶である。

【正倉院「螺鈿紫檀五弦琵琶」】の写真はこちらに掲載されています。
http://zuizan.com/silkroad/kuche/kijiru/biwa.htm


シャオロンさん、来週の日曜日には、青葉台のフィリアホールにて、この五弦琵琶を演奏されます。
おすすめの演奏会ですので、ご案内させていただきます。

蝋梅も五弦琵琶も中国から伝わってきたものです。五弦琵琶は仏教伝来と共に日本に入ってきました。
シルクロードのキジル(克孜尓)千仏洞に描かれる五弦琵琶。
その五弦琵琶を、第一線で活躍される中国琵琶奏者が演奏されるということは、とても感慨深いものがあります。


■奈良・正倉院復元楽器を奏でる「天平楽府(てんぴょうがふ)」演奏会

正倉院の復元楽器を使用する室内アンサンブル「天平楽府」。音楽監督、麦島龍/リュウ・ホンジュンを中心に現在日本の第一線で活躍する演奏家が、当時の音楽を再生。1,300年の時空を超え、妙なる調べを奏でる。

現在日本の第一線で活躍する篳篥(ヒチリキ)、笛、尺八、笙、四弦琵琶、五弦琵琶、阮咸(げんかん)、筝、箜篌(くご)、方響(ほうきょう)、編鐘(へんしょう)、太鼓類、打楽器演奏の達人たち!
音楽監督・訳譜・編曲・笛=麦島 龍(リュウ・ホンジュン)
「天平楽府」メンバー
篳篥=稲葉明徳 笛=萩原貴子 尺八=田辺頌山、金子朋沐枝 笙・竿=銭 騰浩 笙=野田説子 四弦琵琶=ウェイ・ウェイ、ジャン・ティン 阮咸=フェイ・ジャンロン 五弦琵琶=シャオ・ロン 筝=ジャン・シャオチン、高畠一郎 箜篌=菅原朋子、井上麗 チェルチェンの箜篌=有馬律子 打楽器=馬 平、伊勢友一、森岡万貴


日時 1月15日(日)15:00開演
会場 フィリアホール :横浜市青葉区青葉台2-1-1青葉台東急スクエアSouth-1 本館5階
http://www.philiahall.com/main.html

投稿者: kameno 日時: 2006年1月 8日 14:09

コメント: 蝋梅と正倉院の五弦琵琶

こんにちは。TBありがとうございます。一度琵琶の演奏、聴いてみたいですね!

投稿者 熊野秀樹 | 2006年1月21日 15:23

熊野さん、こちらこそTBいただきまして有難うございます。
正倉院の五弦琵琶は、日本にしか現存しないそうです。
先週のTBS日曜日に放送されている「世界遺産」で、この五弦琵琶の音色が流れていました。
民族楽器は、その楽器ゆかりの国を連想させる音を奏でますね。

投稿者 kameno | 2006年1月22日 09:43

はじめまして。ギョームと申します。
「正倉院の五弦琵琶」についての記事、楽しく拝読させていただきました。このタイプの琵琶が、琵琶の中で最も好きです。隋・唐の時代の絵画にはよく描かれているものの、中国では復元楽器を除き、現物が存在しないとか。。。
ただ、韓国(・朝鮮)では、同タイプの楽器が李朝の末期まで宮廷音楽家によって演奏されていたとのことで、演奏の伝承は途絶えてしまいましたが、楽器は現存します。正倉院のものより柱(フレット)の数は多いのですが、中国においても既に唐時代のおわりから宋時代のはじめには、琵琶の柱を増やすという試みがなされつつあったとのこと。韓国(・朝鮮)で「郷琵琶 (五絃琵琶)」と呼んでいるのが、直頚五弦の正倉院タイプです。「唐琵琶(四絃)」は日本の楽琵琶と同形。
なお、『琵琶』は最初は朝鮮半島から伝来したというのが雅楽界の半ば常識でもあるようです。
長文、失礼いたしました。

投稿者 ギョーム | 2008年7月 5日 13:47

ギョーム様
朝鮮半島における郷琵琶の系譜をご紹介くださりありがとうございました。
7月26日には貞昌院にて五弦琵琶の演奏会が開催されます。
http://teishoin.net/blog/001205.html
その際に、琵琶伝来の流れも会場のみなさまにお伝えできればと思っています。

投稿者 kameno | 2008年7月 6日 00:38

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